旋律〜melody(13)
朝。
悟空が目を覚ましたとき、すでに日はかなり高くなっていた。
カーテンの隙間から差し込んでくる光でそれがわかる。
昨日はなんのかんのと眠れず、うとうとしては目を覚ますを繰り返し、結局、ちゃんと寝ついたのは辺りが明るくなる頃だった。
それでも、全然、眠れないと思っていたのに、少しは眠れたのだから良いことなのかもしれない。
のろのろとベッドから起きつつそんなことを思う。
なんだか喉が渇いている。
喉の奥が熱っぽい気がして、それに体も少しだるいようで――本当に風邪のひきはじめだろうか。
悟空は階下に降りて、風邪薬を探し出すと、念のために飲んでおく。
本当はご飯を食べてからの方が良いのだろうが、あまり食欲がない。
お湯を沸かしてホットココアだけ淹れる。
それを抱えて居間に向かい、ソファに膝をかかえて座りこむ。
これからどうしようか、と考える。
今日もまたあの記者達が来るかもしれない。
だから閉めきった雨戸を開ける気にもならなかった。
どこからか入ってくる光で真っ暗というわけではないから、不自由はしない。
だが、いつまでも閉じ籠っているわけにはいかないだろう。
しばらくの間、どこか別の場所に身を潜めるのが一番なのだろうけど。
そう考えて、悟空の心は沈む。
お金があっても、ホテルなどには泊まれないかもしれない。
未成年だし、どう見ても二十歳以上には見えない、どころか悪くすると中学生くらいに見える容姿をしている自覚もある。
どうしたらよいのか。
八方塞がりな気分でいると。
ピンポーン、と呼び鈴が鳴った。
ビクッと悟空は固まる。
そこにまた呼び鈴の音。
ドキドキと心臓が早鐘を打ち出す。
手足の先から血の気が引いてくる。
固まったまま動けないでいると、また呼び鈴の音がした。
「すみません。いらっしゃるのでしょう? お話だけでもお聞かせいただけないでしょうか?」
外から大きな声がかかる。
ますます悟空は手足を縮めた。
門には鍵がかかっている。
それを無理やり開けて入ってくることはない。
それでは不法侵入になる。
だから近づいては来ない。
なかには入ってこれない。
無視していればいい。
いつかは諦める。
――大丈夫。大丈夫よ。
不意に優しい声を思い出した。
あぁ、そうか、と思う。
あの時もそうだった。こうやって家の前に――。
でも、あの時はお母さんがいた。
不安で怯えていたけど、でもぎゅって抱き締めてくれていたから怖くはなかった。
でも、いまは。
悟空はカップをテーブルの上に置くと、耳を塞いで小さく丸まった。