祈りにも似た声無き叫び(5)
ふと悟空が目を開けると、辺りは薄暗かった。
「大丈夫か?」
頭上から声が降ってきた。上を向くと、心配そうな表情を浮かべる三蔵の顔が目に入った。
「三蔵……」
呼ぶ声が少し掠れて、それで悟空は思い出した。
昨日、仕事から帰ってくると、居間で待っていた三蔵に抱きすくめられ、そのまま求められたことを。最初はソファーで。それから、場所を移して何度も。
結局、明け方までずっと、だったと思う。意識を失う前、少し明るくなっていたような気がするから。
ということは、この薄暗さは朝ではなく夕方――?
「あああぁぁ――! お見舞いっ!」
悟空は飛び起きた。
「無理すんな。見舞いなら、俺一人で行くから」
少しふらついた悟空を三蔵が支える。
「って、誰のせいだよ」
三蔵の腕の中、むくれたような顔をして悟空が言う。
「お見舞いは俺も行く。だってこの間、朱泱にまた三蔵と二人で来るって約束したもん」
怒ったような声は、そこで不意に柔らかいものにと変わった。
「ね、三蔵、何かあった?」
悟空は両手を伸ばし、三蔵の頬を包み込んで言う。
「大丈夫?」
三蔵は少し驚いたような表情を浮かべたが、微かに笑みを浮かべると悟空の手をとってその甲に唇を寄せた。
「なんでもない」
「そう? ならいいけど……」
心許なさそうに悟空が言う。それを引き寄せて、三蔵は強く悟空を抱きしめた。
「三蔵?」
「どこにも行くな、悟空。どこにも」
まるで祈るように三蔵が囁く。
「行かないよ」
悟空は三蔵の背中に両手を回した。
「どこにも行かない。ずっと三蔵のそばにいる」
ふっと三蔵の手が緩んだ。悟空が見上げると、自然に三蔵の唇がおりてきた。
何度もキスを交わす。
「ふっ……ん……」
やがて触れてきた手に、悟空から甘い声があがる。
「駄目……、三蔵、お見舞い……」
押しとどめるかのように、悟空は三蔵の手を退けようとした。
だが、その力は弱い。
初めて三蔵が触れたとき、悟空は未知の行為に身を固くして震えていた。痛みに涙を流し、それでも受け入れようとした。
そんな様子がとてもいじらしかった。
そして、それから数か月。
その体はまるで作り変えたかのように――三蔵の教える通り、三蔵に合わせて、三蔵のためだけに変わったかのように、触れると甘い反応を返すようになった。
「悟空……」
愛しさを滲ませて三蔵は囁き、悟空に覆い被さっていった。