19:ひかり


 まるで、爆発が起こったかのようだった。
 突然、辺りがまぶしい光に包まれた。
 一瞬のうちに広がる、光。
 拡散し、侵食し、何もかもを飲み込んでいく。
 何もかもすべてが光に包まれ、その場から消え去っていく。
 三蔵が先ほどまで横になっていたベッドも、そばの小卓も、部屋も。寺さえ、何もかも。
 そして。
 もしかしたら、自分自身でさえ――?

 辺りに満ちる、まばゆい光。
 強すぎる光に、視力が奪われる。目が眩んで何も見えなくなる。
 踏みしめているはずの床の感触がなくなり、立っているのか、横になっているのかさえもわからない。
 浮いているのか、落ちているのかも。
 視力も、そして平衡感覚すら奪われて、何ひとつ抗うこともできぬまま、光の海に放り出される。
 何も、見えない。
 明るすぎて、目を開けていることもできない。
 これでは、闇の中に放り投げられるのとたいして変わりがない。
 どちらも何も見えないのだから。
 白い光と黒い闇。
 正反対のようでいて、本質は一緒なのかもしれない。
 あの子供のように。
 身のうちに巨大な力を秘める、あの子供のように。
 ふと、その顔が頭に浮かぶ。
 無邪気な笑顔と破壊の衝動とをあわせ持つ子供――。

 急速に光が収縮していくのが、目ではなく、感覚でわかった。
 広がった光は、その反動が働いたかのように、今度は急速にすぼまっていく。
 光が纏わりつく。
 圧縮されて、だんだんと密度が濃くなっていくような気がする。
 一緒に押し潰されているような感覚に陥る。
 いや。
 感覚、ではない。
 痛みを感じるわけでない。
 だが、それでも、光とともに一点に集束されていくのがわかった。
 一点に集束されて、その先は――。
 消える。
 消えてしまう。
 このままだと、この世界から。

 最後の一瞬に強く光を放つ線香花火ように、凝縮された光は、一度、瞬くように輝くと、不意に消失した。
 あとに残るのは、何事もなかったかのように、夜の闇に包まれる部屋のみ。
 三蔵の姿はどこにもなかった。