透き通る蒼
ふと目を覚ますと、辺りは明るかった。
悟空は明るさを追って、そっと首を巡らせた。
すると、青空が見えた。
雲ひとつなく、透明な――青――蒼――――……。
「ほ、わ……ぁ」
なんとなく悟空の口から溜息にも似たものが漏れる。
この家の窓は広い。
こうしてベッドに寝て見ているとなんだか本当に空が広く見える。
昨日は――そういえばカーテンもひかずに寝てしまったのだな、と思う。
寝てしまった……というか。
空からまた視線を戻し、すりっと懐くように三蔵の胸に顔を埋めて――。
「……っ」
少し、悟空は息を飲んだ。
というのも。
――繋がった、まま……。
下半身が鈍く痺れていてよくわからなかった――の、だが。
意識した途端――。
吐息をつきそうになって、慌てて噛み殺す。
が、聞こえないくらいの微かな吐息が唇の間から漏れてしまう。
うーっと、微かに上気した顔には似合わない表情を浮かべて、そっと三蔵の方を窺うと、穏やかな寝顔が目に入った。
朝の光に、キラキラと輝く金色の髪。
長い睫毛が、頬に影を落としている。
頬のラインとか通った鼻梁とか――すべての造作が、なぜかとても繊細な感じを醸し出している。
起きているときにはそんな繊細な印象なんてないのだが。
それはともかく。
――きれぇ……。
悟空は、ほぉっと溜息をついて。
「……っ」
だが、すぐに息をつめる。
そんな微かな動きさえ、自分のなかにいる自分とは違う存在を強く意識させられて。
――もう、と思う。
――どうしてくれるんだよ、ホントに。
だけど。
ふっ、と悟空は顔をあげた。
なんで我慢しなきゃいけないのだろう、と思う。
カーテンは引いてないけど、窓が開いているわけではないし。
窓が広く作ってある分、ベランダの柵も高く作ってあって下からは見えないようにはなっているし。
まぁ、別に見えたところで三蔵が自分のモノだとアピールできる絶好のチャンスだから構いはしないのだけど。
クスッと笑い、悟空は少し身を起してそろそろと三蔵の上に乗りあげようとした。
が。
睫毛が微かに揺れて、紫暗の瞳が姿を現した。
「あ……」
起きた途端、幾分眠たげに、そして不機嫌そうに眉がしかめられるが。
――それでも綺麗……。
一瞬、見つめ合う。
と。
「え?」
くるん、と体が逆転した。
「……ふ……ぅんっ」
突然の、下半身を貫く衝撃に悟空はぎゅっと身を固くした。
「っぅ……」
強く強く感じる――熱。
見下ろしてくる深い紫暗の瞳。
そしてその肩越しに。
綺麗な蒼――。
―――――空に抱かれているみたいだ……。
宙に手を伸ばし、微かに悟空は笑みを浮かべた。